悲恋/死ネタ/切甘
お題小説
『恋したくなるお題』から
今際の刻みに呟く名。
お題小説
『恋したくなるお題』から
今際の刻みに呟く名。
胸を撃たれた。
もうこの傷では例え羅刹の力を持ってしても直すことは不可能だろう。
やはり、会津の戦況は良いとは言い難い。
あそこでを置いてきて本当に良かった。
「斉藤組長!!斉藤組長!!」
「済まない…手間をかけたな。もう大丈夫だ」
「血が…!!」
「案ずるな…直に治る…」
「ですが…!」
「大丈夫だ、自らの持ち場に戻り、会津の地を守り抜くのだ!」
「…はっ!!」
俺を戦場から離れた此処まで送ってくれた者に礼を言い、一人になるとのことばかりが頭の中に浮かんでは消えていく。
俺は自らの意思で会津に残り、とも別れた。
後悔などしていないはずなのに、に会いたくてたまらない。
別れる時の様子が鮮明に蘇る。
『本当に、私を連れて行ってくれないんですか?』
『あぁ、会津の戦況は厳しい。あんたじゃ命を落とす危険がある』
『でm『あんたは!!他の男と幸せになるんだ』
『そんな…!』
『俺の最後の願いだ。幸せになってくれ』
『斉藤さんがいなくちゃ幸せになれません…!』
そう言って拒むを無理やり納得させて別れた。
ここまで未練を残すとは…我ながら女々しいな。
目を瞑れば瞼の裏に色鮮やかに蘇る。
浅黄色の羽織をなびかせ、局長や副長、他の皆と肩を並べて歩く様子が…。
その隣にはもちろんもいる。
深い眠りに着く前に最愛の女性の名を呟いた。
「…」
そして俺は暗闇に落ちていった。
――END――
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2012/09/10
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