「トシー…。まだぁー?」
「まだだ。大体ここは学校なんだから先生って呼びやがれ」
「いいじゃん。二人きりなんだし。」
「阿呆。どっから人が湧くかわからねえだろうが。総司とかに見つかりゃ面倒だぞ。」
「湧くって…。虫みたい」
「害虫と同じだよ、ありゃ。」
「教師なのにさいてーい。」
「言ってろ。」
此処は薄桜高校の職員室。
生徒の下校時間もとっくに過ぎ、彼以外の教師ももう既に帰宅した。
私は待ち合わせに来ないので此処に来たら案の定まだ仕事をしていた。
今日は珍しくデートしてくれるって言ったから楽しみにしてたのに。
「もー私帰る。」
「あ?突然どうしたんだよ?」
「だってトシ構ってくれないだもん!いいもん!その辺で総司とか探すから!!」
「あぁ?ふざけたこと言ってねえでこっち来い!!」
立ち上がったトシが私の手を引っ張った。
「ほら、悪かったって。」
「もういいもん!トシなんか仕事しすぎて仕事人間になればいいじゃん!」
「だから悪かったって言ってるだろ。…大体仕事人間ってなんだよ…」
「お嫁さんになってくれる人もいなくなるんだから!」
「…嫁にはお前が卒業したら来てくれるんじゃねえのか?」
トシはそう言うと私の右手に指輪をはめた。
「来年は左手に嵌めてやるからな」
ずるい。…それは反則。
不機嫌だった私は一気に上機嫌になった。
「ダーリン♪コーヒーでもどう?」
「おぅ、頼む。…ハニー」
「トシがハニーって言った!!ハニーだって!!もう一回!!」
「ノリだよ!ノリ!!騒ぐな!!」
「美味しいコーヒー入れてくるからね!!待っててダーリン!!」
「騒ぐな!…って聞いてねえな」
トシが去っていく私の後姿を見つめながら口元を綻ばせたのは私は知らない。
素敵なデートじゃなくても貴方と貴方の甘い言葉があれば私はそれだけで幸せになれるみたい。
だからいっつも甘い言葉で私のこと捕まえててね。
ダーリン♪
――END――
(コーヒー入ったよー!!)
(あぁ、ありがとよ。)
(もーっと私のことを好きになる魔法をかけてあげたよ!)
(飲むのやめるか…)
(わぁん!!)
(嘘だよ嘘。(ホント可愛いことばっかりするな))
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2012/12/22
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