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悲恋/死ネタ/END後
「大丈夫、俺は傍にいるから。ちゃんと生きてくれよ。…俺の、新選組の皆の分まで」

彼は…平助君はそう言うと灰になってしまった。
平助君の頭があったはずの私の膝には灰が残るだけ。
あの確かな重みさえも感じられなくなってしまった。

それから家に閉じこもり平助君の香りが残る着物を抱きしめ、家中に感じられる平助君の残り香に包まれ泣き続けた。
家の中には平助君と暮らしたという、確かな記憶が残っている。

泣き続けた。
記憶を手繰り寄せながら…。
幸せだったころの、一緒にいた記憶を探りながら…。
彼の最期の言葉さえも叶えられないままに…。
彼の死を受け入れられずに…。
平助君が、もうこの世にいないことさえも信じられない。

こうして、私の世界から、色が消えた。
私の世界を彩っていたものが無くなった。

当然だろう。
太陽が無くなったんだから。
私の世界を照らしていた、あの温かい太陽が無くなってしまったんだ。

夜みたいに真っ暗な世界に思えた。
――ドンドンッッ!!

突然戸を叩く音がした。
こんな山奥を訪ねてくる人なんていないのに…。

恐る恐る戸を開けた。

そこにいたのは…風間千景だった。
彼はかつて新選組と敵対していた。
でもいつの間にか助けられる存在になっていた。
この地で暮らすために支援をしてくれたのも彼だ。

「風間さん…。どうされたんですか?」
「ふん…藤堂の奴から不快な手紙が来たのでな、突き返しに来た」
「平助君から…?」
「あぁ、藤堂はどうした?」
「平助君は……」

私は口に出せなくてうつむいてしまった。
風間さんは察してくれたのだろうか何も言わずに頭に手を添えてくれた。

「これを読むといい。お前に渡すように送られてきたものだ」
「私に…?」

風間さんに渡された手紙には確かに平助君の字で文字が綴られていた。

* * *


お前に手紙出すのは二回目だな。
でも、こうしてお前がこの手紙を読んでるってことはもう俺はのそばにはいないんだな。

俺は、に出逢えて本当に幸せだった。
お前と過ごす、穏やかな毎日が京でたくさんの人を斬ってきた俺には似つかわしくないほどで…。

に会えたから、俺はこうして生きられたんだ。

ごめんな、添い遂げることができなくて。
には辛い思いをさせちまっていると思う。

でもな、これだけは忘れないでくれ。
お前と離れていたって俺の心はのすぐそばにある。
ずっと近くで見守っているから。

にはちゃんと生きて欲しいんだ。
辛いだろうけど、俺の分も…新選組の皆の分も…。

笑顔で生きることが一番嬉しい。

の笑顔が俺の世界を照らしてくれていた。
羅刹になっても太陽みたいなの笑顔だけは受け入れられた。
お天道様の下を歩けなくてもといるだけで幸せだった。

どうか世界を赦して。
お前に残酷な運命を与える世界を…。
俺はこの世界に、この時代に生まれることができて幸せだったんだ。
充実してた。


必ず、そばでのこと守り通してみせるから。
ずっと傍で見守っているから。


たくさんの幸せをありがとう。

        藤堂 平助
* * *
「ッッッ……――!!」


読みながら私は泣いていた。

もう枯れていたと思っていた涙がまた滲みだし
た。

平助君の深い愛情が。
最後の言葉を…願いを叶えられていない自分が悔しくて涙を零した。

私こそ、たくさんの幸せをありがとう。
今はまだ、きっとあなたの面影を探してしまう。

でも…でもいつか、あなたとの思い出を笑顔で話せる日が来るまで。

あの頃も幸せだったと思える日が来るまで。

平助君の最後の願いを叶えるのは簡単じゃない。

でも、いつかきっと…必ず叶えてみせるから。
どうか、傍で見守っていて。


元通りの生活には戻れないかもしれない。
失ったものが大きすぎるから。

でも、それでもちゃんと生きていく。
世界に色を付けるために。
笑顔で生きるために…。




「応援しているよ。見守っているから」

確かに平助君が…みんながそっと呟いた声を窓から吹き込んだ風が運んだ気がした。

そっと頬を優しくなでながら…。

――END――

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≪ 大人な彼 慌てん坊 ≫
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12/22 企画/クリスマス。
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