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切甘
お題小説
『確かに恋だった』から。
闘病中の彼のセリフ
総司さんはなにも食べてくれない。
持って行っても食欲がないの一点張りだ。

何なら食べてくれるのだろう…。

食べなきゃ治るものも治らなくなってしまう。

「失礼します」
「あぁ。食欲ないからいらないよ。」
「そうですか…。なになら食べてくれますか?」
「食欲ないから何も食べたくない」
「それじゃあ治るものも治らないです」
「治らないんだからいいじゃない」
「そんなこと言わないでください!!私は!治るって信じてます!!」
「君が信じてたって治らないものは治らないんだよ。僕はもう、刀を振るえない…」
「っ……。」

総司さんの悲しそうな顔に何も言えなくなってしまった。
私は総司さんの病が治ることを望んでいる。きっとみんなそうだ。もちろん彼自身も。

なぜだろう…。どうして彼が…。

私は総司さんに何か滋養のあるものを食べてもらいたくて、町へ買い物に行った。

「なにか滋養のあるものはありませんか?」

いろいろな店で聞いて回り、いくつもの物を手に入れた。
早速、戻って料理を始めよう。総司さんが1口でも口に入れてくれることを願って…。

料理が出来上がって、再び総司さんの部屋に向かう。

――ゴホッ!!ゴホッッ!!

総司さんの部屋から咳が聞こえた。
私は急いで向かった。

「総司さんッ!!」

背中をさすろうとすると総司さんに手で制された。
何もできずに見守っているとしばらくして彼の咳が止んだ。

ちゃん、君にうつしたくないから僕が咳をしている時は近づかないで。」
「でもっ!!」
「いいから。」
「私は…苦しそうな総司さんを放っておけないです」
「君に僕だってうつしたくないんだ。」

総司さんの目は本気だった。
でも私は…何かが切れた。

「総司さんのそばにいるんです!!総司さんの病ならうつっても構いません!!」

はっきりと言い切った。
総司さんは少し驚いた目をした。
私は構わずに続ける。

「これは町で買ってきた滋養のあるものです!しっかり食べてください!!私にうつしたくないんだったら自分で治そうとしてください!!私は総司さんに付きまとうんですから!!」

今まで溜まっていたものをすべて言い切った。
すると総司さんは嬉しそうな顔をして微笑んだ。

「ようやくいつものちゃんっぽくなったね。ずっとどこか遠慮してたからね」
「え…?」
「ずっと心配した顔ばっかりで笑わないんだもん」

そうだったんだ。私は笑えていなかったんだ。

「君の笑顔が1番の薬だよ。ちゃん、ずっとそばで笑っていて」
「…はいっ!!」

総司さんの優しい微笑みが私の心を温かくさせる。
彼のそばで笑って彼を支え続けよう。


――END――

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