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悲恋/死ネタ

『月の夜に…』の続編
何年前のことだろう…。いや、あれはもう何十年にもなるのかな。



いくつも季節を重ねる中、私はたくさんの昔の仲間たちの訃報を聞いた。



そして私は桜が散り始めるころに歳三さんが亡くなったことを風の噂で耳にした。



新選組の仲間を助けに行く途中で撃たれたそうだ。

彼らしい最期だったと思う。

最期まで新選組のために生き抜いたんだから。



歳三さんと別れてからいくつも季節を重ねた。



あの時の子もしっかり産めて育て上げた。

名前を『真誇人(マコト)』と言う。

歳三さんがこの子に送った大切な贈り物だ。

歳三さんそっくりの顔で大きくなるにつれてその面影は増していった。



その真誇人がもうお嫁さんを貰って子供まで授かれるようにたんだ。

何十年も経っているのは当たり前だ。



何度聞かせたことだろう、「あなたの父様はとても立派な方でした」と。

幼い真誇人に歳三さんのことを話すたびに涙が出てきた。

何度あの小さな背中に助けられただろう。

紫色の綺麗な瞳で懸命に私を慰めてくれた真誇人。



可愛い私と歳三さんの子供。



何度夢見たことでしょう。

歳三さんが帰ってきて真誇人をあの優しい大きな腕で抱く姿を。

約束したのに帰ってこなかったあなた。

私は歳三さんとの約束をちゃんと果たしたのに…。

―――――――――

「母様!!母様!!」

「ぅ…ん。」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、ありがとう。…ほら、泣きそうな顔をしないで。お嫁さんの前でみっともないでしょう?」

「ですが…っ!!」

「大丈夫よ。…すこし昔の夢を見ていただけ」



私は今、床の中だ。

流行り病にかかってしまった。進行がとても速い病なんだそうだ。

きっと私の命ももうすぐ尽きるだろう。



「母様…!!」



真誇人は何かを感じたのか私の手を強く握った。

まったく、こういうところは誰に似たのかしら。妙に勘が鋭いから隠し事もできない。



「真誇人…。どうしたの?」

「母様…」

「ほら、しゃきっとなさい。母様の方が長く生きてきたのよ。先に死ぬのは当たり前でしょう?これは世の理なのよ」

「ですが…!!」

「あなたはもう、お嫁さんがいるのよ。赤ちゃんだって産まれるんだし、しっかりなさい」

「母様が…っ!!」



真誇人は半分泣いてしまっている。

そこまで顔色が悪いのだろうか…。



身体がどんどん重くなっていく。

瞼が落ちてしまいそうだ。

もう…ほんのあと数刻しか残されていないだろう。



「母様…っ!!」

「なぁに?」

「母様はどうなるんですか?」



真誇人の質問に微笑んで答えた。



「母様はね、父様のところへ行くのよ。せっかちで短気な人だったからそろそろ行かないと、怒っちゃうわ」



「……僕は死んだらどうなりますか?もう母様たちに会えないんですか?」

「大丈夫。父様と二人で待っていてあげるからゆっくりしていなさい。きっともっといっぱいで待っているわ」

「いっぱい…?」

「そう。母様の大切な仲間もいるはずだから…ね。」

「はい…」



「真誇人、この世界にはね素敵なことが溢れているの。悲しいことがあってもすぐに幸せは訪れる。」

「素敵なこと…」

「そう、あなたに会えたのもそう。父様と離れるのは辛かったけどすぐに真誇人に会えたんだもの。後悔だってしてないのよ」

「そうなんですか…?」

「えぇ。あなたは私の…いいえ母様と父様の宝物よ。」

「僕は…母様と父様の子供で…幸せでした」



真誇人の言葉に涙が出た。

必死に育てた子が紡いだ最期の言葉。

これ以上に幸せなことはない。



「ありがとう、真誇人。産まれてきてくれてありがとう…」



私はそう言いながら目を閉じた。



* * *

次に目を開けて最初に飛び込んだ顔に懐かしさと愛しさが溢れ思わず抱きついた。



「歳三さんっっ!!」

…」



歳三さんはあの温かな腕で抱きしめ返してくれた。



「会いたかったです…」

「俺もだ…。こうして触れたかった」

「私、歳三さんのこと待っていました。子供も…真誇人もしっかり育てました」

「あぁ…あぁ…。しっかり見ていた。ありがとう」



私たちは離れていた時を埋めるかのように抱き合い、口づけをした。

――もう、離れない。







「おーい!いたいた!!」



遠くから懐かしい声が響く。



「皆!!」

「お疲れ。よく頑張ったな」

「これからはゆっくり休めよ」

「土方さんを使ってゆっくりしなよ」

「総司、皆で協力するのだ」



懐かしいやり取りも聞こえる。



「もっと先に進むか?」

「いえ、ここで待ちます。真誇人に待っているって言ったので」

「あぁ…そうだったな」



進もうとするみんなを土方さんは呼び止めた。



「俺はとここで子供が来るのを待っている。先に行ってろ」

「水臭ぇこと言うなよ土方さん。」

「俺らも一緒に待つから」

「そうだね、ちゃんが頑張って育てた子みたいしね」

「早く来たら追い返さねばならん」



―――真誇人、聞こえていますか?母様たちはここで待っています。ゆっくり生きて、世界を楽しんで来てね。





――END――







✿✿あとがき✿✿



様、読んでくれてありがとうございました。

幸せな感じにまとめたくて書きました。

いかがでしょうか?

前半暗くて書くのが怖かったです。

自分的にはまぁ幸せにまとめられてよかったかな…と思います。

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