ほのぼの/甘
お題小説
『恋したくなるお題』から。
雨の日のお迎え
お題小説
『恋したくなるお題』から。
雨の日のお迎え
今日は珍しく快晴だった。
今月に入ってから雨が続いていたので今日の太陽は嬉しいものだった。
急激な気温の変化のせいか体調を崩す隊士の方が増えて私と山崎さんは何かと忙しく動き回っていた。
ちょうど一段落させたところで土方さんに呼ばれた。
「悪いが買い物を頼まれてくれねぇか?生憎、空いてる隊士がいなくてな」
「はい!いいですよ!何を買ってくればいいんですか?」
土方さんは“悪いな”と微笑むと私に何かの紙を渡してきた。
「それが買ってきてもらいてぇもんだ。金はこれだからな。落とさねぇように持ってろよ」
「はい!」
「じゃあ行ってきます!」
「あぁ。頼んだぜ」
----------------
私にもお使いを頼んでくれるようになったのが
嬉しくて、私は張り切って京の市中を歩いていた。
「えーと……あ、ここだ!」
店にたどり着くと早速言われていたものを買った。
「雨が降りそうだねぇ。あんたも早めに帰った方がいいよ」
「はい!そうします。紙が濡れちゃいますし」
店の人が言うように空は今にも降り出しそうだった。
店を出て走って屯所に向かっていると、顔に何か当たった。
「あ、降り出しちゃった…」
急いで帰ろうとするが次第に強くなっていく雨。
仕方なく私は近くの軒先で雨宿りをすることにした。
* * *
そのころの屯所
「ったく、いきなり降り出すんだもんなぁー」
「ホントだぜ。せっかく庭で稽古してたってのによ」
「まぁ雨なんてもんは仕方ねぇさ。」
そう言いながら玄関で濡れたところを拭いている藤堂・永倉・原田の3人。
すると土方が玄関に来た。
「土方さん、どうしたんだ?」
「お前ら知らねぇか?」
「?見てねぇけど…どうしたんだ?」
「あいつに買い物を頼んだらこの雨だろ」
「傘は持たせなかったのか?」
「あぁ。頼んだときは晴れていたからな…」
罰の悪そうな顔で頷く土方。
ずっと黙っていた藤堂だったが不意に立ち上がった。
「俺っ!!迎えに行ってくる!!」
そういうと藤堂は傘も持たずに走り出してしまった。
「あいつ…傘も持たねぇで行っちまったよ」
「あれじゃあ雨がやむまで帰ってこれねぇじゃねぇか」
「何のために迎えに行くんだよ…」
「はははは!!平助らしいじゃねぇかよ!なあ、左之!!」
「まぁあいつらしいっちゃあ、あいつらしいけどな」
* * *
「!!」
「あっ!!平助君!!どうしたの?こんなに濡れて…風邪ひいちゃうよ」
「お前を迎えに来たんだよ」
「そうなの?ありがとう!!」
「おぅ。…ってあれ!?傘がねぇ…」
「え?」
「やべぇ!!傘忘れちまった…!もう1回屯所に帰って持ってくる!!待ってろよ!!」
「いいよ!わざわざ屯所に帰らないで止むまで二人で話してよう?また濡れちゃうよ」
「でも…迎えに来たのに…」
「来てくれただけで嬉しいから。ね?」
「あ…あぁ。ごめんな」
「ううん。こちらこそありがとう!」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「なんか最近とゆっくり話す機会がなかった気がする」
「そうだね。私も平助君も結構バタバタしてたし」
「ったく。ほとんどの隊士が腹壊しちまってるからなー。俺らが余計忙しくなってるよ」
「お疲れ様です。平助君」
「ありがとな。こそお疲れ。隊士の看病してるんだろ。あんなに多いから大変だよな」
「ありがとう。でもそんなことないよ。それに……なんでもない。」
「??なんだよ?言いかけでやめられるとすげぇ気になるんだけど。教えて?」
「笑わない?」
「え?あ…あぁ。笑わねぇよ」
私は口ごもらせながら、おずおずと口を開く。
「あんまり話せなかったから、ここでゆっくり話せてちょっと嬉しいなって思って…」
私の顔は真っ赤だっただろう。
顔に熱が集まっていくのがわかった。
何も言わない平助君を不審に思い、顔を少し上げてみるとそこには真っ赤な顔をした、平助君がいた。
「俺だってお前とゆっくり話せて嬉しいって思ってた。同じだな」
赤い顔で笑ってそう伝えてくれた平助君の笑顔につられて私も笑った。
二人で雨がやむまでの間の幸せなひと時を過ごした。
雨の日もいいかもしれない…そんなことを二人とも考えていたことはまだ知らない。
――END――
今月に入ってから雨が続いていたので今日の太陽は嬉しいものだった。
急激な気温の変化のせいか体調を崩す隊士の方が増えて私と山崎さんは何かと忙しく動き回っていた。
ちょうど一段落させたところで土方さんに呼ばれた。
「悪いが買い物を頼まれてくれねぇか?生憎、空いてる隊士がいなくてな」
「はい!いいですよ!何を買ってくればいいんですか?」
土方さんは“悪いな”と微笑むと私に何かの紙を渡してきた。
「それが買ってきてもらいてぇもんだ。金はこれだからな。落とさねぇように持ってろよ」
「はい!」
「じゃあ行ってきます!」
「あぁ。頼んだぜ」
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私にもお使いを頼んでくれるようになったのが
嬉しくて、私は張り切って京の市中を歩いていた。
「えーと……あ、ここだ!」
店にたどり着くと早速言われていたものを買った。
「雨が降りそうだねぇ。あんたも早めに帰った方がいいよ」
「はい!そうします。紙が濡れちゃいますし」
店の人が言うように空は今にも降り出しそうだった。
店を出て走って屯所に向かっていると、顔に何か当たった。
「あ、降り出しちゃった…」
急いで帰ろうとするが次第に強くなっていく雨。
仕方なく私は近くの軒先で雨宿りをすることにした。
* * *
そのころの屯所
「ったく、いきなり降り出すんだもんなぁー」
「ホントだぜ。せっかく庭で稽古してたってのによ」
「まぁ雨なんてもんは仕方ねぇさ。」
そう言いながら玄関で濡れたところを拭いている藤堂・永倉・原田の3人。
すると土方が玄関に来た。
「土方さん、どうしたんだ?」
「お前ら知らねぇか?」
「?見てねぇけど…どうしたんだ?」
「あいつに買い物を頼んだらこの雨だろ」
「傘は持たせなかったのか?」
「あぁ。頼んだときは晴れていたからな…」
罰の悪そうな顔で頷く土方。
ずっと黙っていた藤堂だったが不意に立ち上がった。
「俺っ!!迎えに行ってくる!!」
そういうと藤堂は傘も持たずに走り出してしまった。
「あいつ…傘も持たねぇで行っちまったよ」
「あれじゃあ雨がやむまで帰ってこれねぇじゃねぇか」
「何のために迎えに行くんだよ…」
「はははは!!平助らしいじゃねぇかよ!なあ、左之!!」
「まぁあいつらしいっちゃあ、あいつらしいけどな」
* * *
「!!」
「あっ!!平助君!!どうしたの?こんなに濡れて…風邪ひいちゃうよ」
「お前を迎えに来たんだよ」
「そうなの?ありがとう!!」
「おぅ。…ってあれ!?傘がねぇ…」
「え?」
「やべぇ!!傘忘れちまった…!もう1回屯所に帰って持ってくる!!待ってろよ!!」
「いいよ!わざわざ屯所に帰らないで止むまで二人で話してよう?また濡れちゃうよ」
「でも…迎えに来たのに…」
「来てくれただけで嬉しいから。ね?」
「あ…あぁ。ごめんな」
「ううん。こちらこそありがとう!」
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「なんか最近とゆっくり話す機会がなかった気がする」
「そうだね。私も平助君も結構バタバタしてたし」
「ったく。ほとんどの隊士が腹壊しちまってるからなー。俺らが余計忙しくなってるよ」
「お疲れ様です。平助君」
「ありがとな。こそお疲れ。隊士の看病してるんだろ。あんなに多いから大変だよな」
「ありがとう。でもそんなことないよ。それに……なんでもない。」
「??なんだよ?言いかけでやめられるとすげぇ気になるんだけど。教えて?」
「笑わない?」
「え?あ…あぁ。笑わねぇよ」
私は口ごもらせながら、おずおずと口を開く。
「あんまり話せなかったから、ここでゆっくり話せてちょっと嬉しいなって思って…」
私の顔は真っ赤だっただろう。
顔に熱が集まっていくのがわかった。
何も言わない平助君を不審に思い、顔を少し上げてみるとそこには真っ赤な顔をした、平助君がいた。
「俺だってお前とゆっくり話せて嬉しいって思ってた。同じだな」
赤い顔で笑ってそう伝えてくれた平助君の笑顔につられて私も笑った。
二人で雨がやむまでの間の幸せなひと時を過ごした。
雨の日もいいかもしれない…そんなことを二人とも考えていたことはまだ知らない。
――END――
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2012/08/24
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