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企画モノ
『あなたの隣を歩きたい!!』~斉藤一編~

ある日の新選組の屯所の昼下がり。
男所帯として知られる場所には似つかわしくない、軽快な足音と声が響いた。

「はっじめくーん」

は斉藤を見つけて後ろから飛びついた。
それに対して斉藤はたいして驚いたふりもなくを愛おしそうに見つめた。

「どうした、何か用か?」
「用はないけど…一君見つけたからつい」
「そうか」

は斉藤の質問に微笑みながら答えた。斉藤も斉藤でその姿を見て微笑んだ。
しばらく微笑んで見つめ合っていたが、は口を開いた。

「一君、今日は非番なの?」
「そうだが…何故そう思う?」
「だってこの時間に屯所にいるの珍しいから。いつも道場か巡察なのに」

斉藤はその答えに驚いた。彼女だって忙しいはずなのに自分の行動を理解してくれているあたりに嬉しく感じる。

は午後は用事はないのか?」
「うん。巡察は午前に終わったし」
「なら、ともに出かけないか?」
「え?」
の好きそうな甘味屋を見つけたのだ」
「…っ!うん、行く!!」
「そうか…なら行くぞ」

は着替えると斉藤と二人で仲良く出かけて行った。

京の街に出てしばらくしてから、斉藤とに先ほどのような穏やかな空気は流れていない。
それもそのはず。は斉藤から少し離れて歩いているのだ。
斉藤はその距離に耐え切れなくなり立ち止まって振り返り口を開いた。

「…、何故離れて歩く?」
「え…だって」

は気まずそうに口を開いた。

「一君のこと女の子たち皆が見ているから、私が隣に理うのはおかしいし、居心地悪かったから…」
「……そうか。なら仕方がない」

斉藤は残念そうにまた歩き出した。
は普段は凛々しく隊士たちのことを引っ張って行ける強さがあるのに、こういう時だけ妙にしおらしくなってしまう。
こういう時に普段がどれだけ強くてもは女子なのだ、と思い知らされる。
そして、その変化が可愛らしく思えてしまう。

斉藤とはその後離れて歩いていた。
だが、斉藤はのことをちらちらと振り返りながら見守っていた。

すると、が浪士にぶつかってしまった。

「あっ…!すみません」
「痛えな。おい、姉ちゃん。ちょっと付き合ってもらうぞ」
「やめてください!!ちゃんと謝りました」
「謝ればいいってもんじゃねえよ」

浪士はの腕を乱暴に掴んだ。
このくらいの相手、刀があれば余裕で倒せるだろうが今のは刀を持っていない。
男の力に敵うはずもなくは連れて行かれそうになる。

「おい、連れの者が悪いことをした。離してくれないか」

斉藤が割って入ってきた。

「お前だれだよ?」
「その者の連れだ。悪いことをした。すまない」
「へっ、兄ちゃんちょっとこの姉ちゃん借りてくぜ」
「すまないと言っているだろう。その手を離せ」
「なんだと…!!この俺に盾つくなんていい度胸じゃねえか。」

そう言うと浪士は刀を抜いた。

「こちらは穏便にすまそうとしているのに…。仕方がない」

斉藤も刀を抜いた。
だが、実力の差は歴然。もの数秒で浪士をねじ伏せた。

斉藤はの手を握って歩き出した。

「あのっ!!一君…手!!」

だが斉藤は離さずに言った。

「やはり、危ない。心配だから、俺の隣を歩いてくれないか?…それにが隣にいると嬉しい」

斉藤の言葉には顔を赤くしてうなずいた。斉藤も斉藤で顔を赤くしている。

その後二人で甘味屋まで行き、京の街を楽しんだのだった。
もちろん、手はつないだままで。


――END――

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