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悲恋気味/町娘/平助落ち
近頃の京の街の治安はとても悪くなっている。
一人で出歩くのを躊躇われるくらい物騒だ。

そんな中、私は買い物に一人で歩いていた。

「きゃっ!」
「ぅわ!」

浪士が私にぶつかってきた。
その浪士は私の方を向いた。

「姉ちゃん、どこ見て歩いていやがる!!」
「それを言うなら私です!あなたが先にが私にぶつかったんでしょう!」
「なんだとっっ…!勤王の志士である我に口答え致す気か!」
「勤王だか何だか知りませんが京で大きな顔しないでください!」
「この女…!調子に乗りやがって!」
「そうやってすぐ刀で解決しようとして!力の無いもの苛めて楽しいんですか!!」
「女!我ら勤王の志士に無礼な!」

浪士が抜いた刀が振り下ろされた。

―――カキンッッ!!

私は斬られなかったのだろうか…。
恐る恐る目を開けると浅黄色の羽織を着た若い人が浪士の刀を受け止めていた。

「勤王の志士なんだって?ちょっと屯所で話聞いてみたいんだけど。」
「し…新選組!」
「おい、屯所に連行しといてくれ」
「はいっ!」

浪士はその場で取り押さえられた。
刀を受け止めた人がくるりとこちらを向いた。

「大丈夫だったか?」

その人はまだ顔に幼さが残っているが整った顔をしていて、人斬りの新選組とは思えなかった。

「姉ちゃん、大丈夫か?」
「あっ…はい!ありがとうございます!」
「いや、俺たちもこれが仕事だし…!でもああいう輩は危ないから気を付けた方がいいぜ。あんまり関わらない方がいいって」
「私は…間違ったことは言っていません」
「そうかもしれないけどさ…。…これからはなんかあったら俺たち新選組を頼れ、な?」
「でも…」
「俺たちは京の治安を守るのが仕事だからさ」

そう言うと彼はニカッと笑った。

「俺、藤堂平助。お前は?」
「あっ…申し遅れました。私、と申します。」
「よろしくな」
「こちらこそよろしくお願い致します。」
「あっ、敬語なんか使うなって!同じくらいだろ、平助でいいし」
「えっ…じゃあ私のこともって呼んでね」
「あぁ!」

私たちは自己紹介をし合った。それから彼の提案で甘味屋ですこし話すことにした。

「でもさ、真剣な話ああいうのは危ないぜ」
「わかってるけど…。やっぱり頭に来るじゃない。自分でぶつかったくせに謝れなんて」
「まぁ…そうだけど」

それからしばらく他愛のないことを話した。

「あ、そろそろ帰らなきゃ」
「本当だ、もうこんな時間」
「随分話し込んじゃったね」
「あぁ、ホントに。とだと話題が尽きねえし…楽しかった」
「私も楽しかったよ」
「なぁ…また今度会えねえかな?」
「…!うん、ぜひっ!」

私たちはこうしてまた会う約束を結んだ。

そうして何度か会っていくうちに私たちは互いに惹かれあい、恋仲になった。

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